路地裏に堂々と佇む古民家おでん居酒屋
船橋駅から徒歩5分ほどの路地裏に、元々は住宅として使用されていた木造2階建を居酒屋へ改装するプロジェクト。
古いものの良さは時間や環境で生まれるものだと考えている。
新しいものをその良さに寄せようとしても、時間や環境を超えた深みそのものを生み出すことはできない。
私たちはまず、何を残すかということを考え始めました。
構造である柱や梁には、過去の墨付けが残り、天井裏には新築時のお守り札が残り、室内は古い土壁がところどころ朽ち果てている。
階段に至ってはところどころ抜けそうで、安心して2階に行くこともできない。
それらの過去を経年劣化として交換することは簡単だが、それを新しく作るもので表現することは不可能である。
まず1階の天井はスケルトンとし、階段は壊れない程度で残すことにした。
実はこの建物は2つの路地に挟まれており、1階はどちらの路地ともアクセスができるように入り口を2箇所設けている。
店の顔となるファサードにおいても、入り口に合わせ2面存在しており、その工事範囲は前文の通り過去を重んじて最低限の工事範囲にて計画を進めた。
その為、まさに外観の見た目は「木造2階建て住宅」だが、そこに無理やり居酒屋をねじ込むことで、アンバランスな佇まいをあえて意識した。
言うまでもなく路地裏は路地裏らしく決して明るくはない。
ただ、その環境は今回の場合非常に好都合であり「路地の裏 灯篭」という店名がピッタリとハマるような存在感を醸し出すことができた。
それは路面から店内の賑わいが見える大開口や、裏口の妖艶なピンク色のネオンの光を設けることで叶えることができ、
その独特な色気は過去の軌跡を残すというベースがあることで成立している。
什器類はタモ材で構成し、白木のパキッとした木目は古い建物という背景の中でも、しっかりと居酒屋としてまとめる要素となっている。
路面沿いの外壁に設けた円形のガラス窓からは、そのカウンターをちょうど線上に眺めることができ、外観と内観のメリハリを店外からでも感じることができる計画を意識した。
ラフに残した古く朽ち果てた軌跡の数々と、しっかりと計画され作り込まれた造作物のバランスは言ってしまえばアンバランスではあるが、それが成立できるスタイルを求め、今回のデザインを組み立てた。
Complete 2022年10月
Location Funabashi Chiba
Area 43,6㎡/13.2t