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2024.03.21

good thing

ヘアサロンというジャンルから逸脱する場所

ヘアサロンという型にこだわらず、ジャンルを超え、さまざまなコミュニティが集う場所。

そこは元々弁当を作っていた工場で、ところどころ欠けたコンクリート、GLボンドの跡が残る壁や、中途半端にタイルが残るスケルトン空間だった。

その光景は路面からは全く異なる景色で、この場所でしか存在しない世界観を作りたいと考えた。

ミッドセンチュリー時代を彷彿とする什器デザインをベースに現代のカルチャーをミックスし、時代に寄せず新しい考え方を1つのテーマとした。

建物は千駄ヶ谷らしく、外壁にはオーロラタイルが貼られ、アーチ型の開口が印象的なレトロな風合いの佇まい。

ファサードのデザインをする上で、その建物の印象や街自体の景観に反することなく、スッと馴染むものを意識しており、建物自体にあるアーチとの親和性のあるものを意識し計画を進めた。

店舗オーナーからの要望で、店舗に入らなくても物販商品の購入ができるようなスポットを設けたいとのことで、古くから親しみのあるタバコ店のようなカウンターを造作し、街との繋がりを設けた。

ファサードからの見え方を考慮したレセプション、セット面、シャンプースペースを配置している。

レセプションカウンターは4mほどのサイズで造作し、そこでは商品のディスプレイからレセプション、カラー剤の調合まで完結し、且つポップアップイベントなども行うことができる。ビッグサイズのカウンターはそのサイズに見合った役割を持っており、店内でも特に印象的なスポットである。また、本格的な炭酸水用のサーバーを設けたりと枠のない展開を視野に入れ構造を計画した。

様々な使い方で使用されるカウンターに、非日常感を感じてもらいたいという思いから、足元には近頃ではなかなか見られない配色、且つ形状のデッドストックタイルを使用したり、天板の縁には金物職人と作ったボテっとしたメッキの縁があったりと、珍しい要素を多く組み込んだ。

セット面は手前と奥で2スペース配置している。手前はバーバーチェアと壁面ミラーで構成したセット面である。

バーバーチェアの特徴として、高さのある独特な存在感があり、その堂々とした印象はファサードデザインを引き立たせる。

奥側には4mほどの特大のキャビネットを配置した。ドライヤーの格納スペースや専用回路のコンセント計画など、サロンワークに適した設計を考えた。

シャンプースペースは什器とシャンプー台というシンプルな作りをしているが、足元のモザイクタイルはオリジナルのパターンを構成し、現場にてバランスを整えながら貼り進めたもので、他のスペースと比較すると温度の低い落ち着いた場所とした。

それぞれのスペースで照明自体の色温度の差が大きく、ワンルームの中でこれまではっきりと使い分けるということは珍しいが、その効果が各々の役割を演出している。

什器の取手や小物類においても細かくそれぞれのデザインを組み立ており、今回のサロンでしか存在しないアイテムを多く計画した。

これらの細部に至る数々のアイテムたちが、この店舗でしか感じることのない世界観を構成する要素であり、こういった素材の集合によって空間を創造した。

Complete  2022年11月

Location  Kitasando Shibuya