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2024.03.15

INHERIT GALLERY BOOKS

変化を楽しむギャラリー

世田谷区下馬で展開されているINHERIT GALLERYに続くこちらのギャラリーは従来の壁面展示に加え、展示用什器を設けた。

ギャラリー空間としては至ってシンプルでニュートラルなもの構成している。

サーファーであるオーナーは自らのサーフボードをメンテナンスするように、壁面展示が終わるとその跡にパテをし、塗装をして次の展示の準備をする。

壁の下部に隙間を設けたのは、壁の塗装をするときに養生テープを貼る手間を避ける為であり、併せてその隙間にはコンセントを仕込んでいる。

これまでギャラリーを運営してきた経験から、これらの仕掛けは設計時に自然と話に上がった。

展示用什器はバーチ合板で仕上げた同じサイズのものを3台設置している。

展示に合わせ、高さや奥行き、パターンの可変ができる什器のデザインをした。

飛び出る展示台を平面的に見ると、合板の断面線の木枠組みと、白い無地の面で構成し、これに額装の意味を込めている。

額装の一般的な考え方は2Dであるが、このギミックに展示することは額装の概念を3Dに変換し、さらにはギミックのパターンを可変することにより、作品の世界観や展示のコンセプトを、アーティスト各々によって高さと距離を工夫することで表現をすることができる。

什器と空間とのバランスを考慮し、存在自体が間延びしないよう、木目は縦方向に統一し、且つ、超大判の合板から切り出すことで、面の中に継ぎ目を設けず、面を組み上げている。

小口の断面線においても、より細く美しい仕上げを求め、材料にはバーチ合板を採用した。
また、部分的に節抜け箇所に穴埋めや継ぎがあるグレードの合板を採用したが、これはギャラリースペースの名称である「Inherit」(受け継いでいく)という意味を重ねている。

照明はラインごとに調光、調色のものを採用しており、照明効果を利用してさまざまな演出をすることができる。

夜の時間帯の青白く暗い展示などは、不気味で少し怖く、面白い。

普段体感しない光の温度は異世界の中にいるような気分にさせられる。

そういった展示の展開ができるという点も、INHERIT GALLERY BOOKSの特徴である。

什器や照明などの変化を利用し、アーティストが何かを伝えられる為のツールとして使える空間をイメージした。

 

Complete  2023年4月

Location   Daita Setagaya

Area        35㎡/10.6t